ザハ・ハディドの設計『香港理工大学 ジョッキー・クラブ・イノベーション・タワー/The Jockey Club Innovation Tower 』3/3

ザハ・ハディッド/Zaha Hadid

ザハ・ハディドの設計、香港理工大学 ジョッキー・クラブ・イノベーション・タワー

部分詳細を見ていく

階段の接写です。手摺はくぼみの空間になっていて足元には間接照明。

間接照明を覗くとこんな感じ。フレキシブルLED照明ですね。奥の部分が曲がっていますね。

照明はフィリップス製です。

階段の脇には点検口があります。

ラッチ式で誰でも開けられました。内部は軽量金属で組み立てられていますね。

配線の孔の処理はしていないところも結構ありました。見えないところにはお金を掛けない。徹底されているかもしれません。

何気ない空間もライン状の照明(乳白アクリルパネル)と空調や消防設備を納めるルーバー状の空間になっています。

スプリンクラーがあったり。

スピーカーが隠されています。

スピーカーを非常照明が貫通しています。これは大胆な・・・

浮いているように見えるルーバーはめっき製の下地に取り付けられています。

一番ルーバーに近い下地だけ黒に塗られていますね。

奥の部分は塗装されてなくても、見上げて凝視しなければ気になりません。

懐は比較的余裕がありそうでした。無理をするとルーバーの間から見え易くなりますからね。

外部に通じる出入口はエアカーテンが徹底されています。

特徴的な外部の庇です。

メンテナンス用に足場があります。片持ちで飛び出して鉄骨で組んでいると思います。その周囲に化粧アルミパネルの構成ですね。ビスは内側から見えますが、

外からは見えません。

ちゃんと水抜き孔があります。アルミの形状で水勾配を取って水抜き孔に集まるようにしているのがわかります。

庇の控えを取っている場所は目地・無目のところからです。止水が気になります。

内側から控えの部分接写です。思ったよりキレイです。万が一ここから水が入っても方立の中に排水機構があると思います。

こういう躯体取り合いはシーリングですね。

低層部の外装のアルミパネル。

底目地でモルタル。ビスが見えます。パネルは化粧で止水ラインはもう一つ後ろですね。日本だとシールを打ちたくなる人が多いと思います。

 

レバーハンドルです。手摺同様シンプルなデザイン。こういうところでコストをかけていません。意匠屋は気になりますよね。

 

 

いかがでしたか。

かなり見所満載。建築オタクとしては非常に楽しい時間を過ごせました。

 

総評

さて、総評ということで個人的に評価してみます。

歴史のある大学、景観の整ったキャンパス内にこのような建築が建つことに対して批判もあります。日本の新国立競技場の時もそうでした。歴史や土地の”文脈”に対し、何の意義も持たない建築が建って良いのか。もしかしたらザハは意義があると考えデザインしているかもしれません。しかし、このような形状では意見が分かれるところだと思います。建築・都市の歴史から見ると、今日の成熟した社会ではこの”文脈”が重要視される傾向にあります。

このような刺激的な建築が出現したことによって、”文脈”は大きく変貌を遂げます。それが、この大学に何をもたらすのか、紅磡という地域、香港という都市に何をもたらすのか。評価の一番のポイントはこの「文脈に対しての評価」だと思います。

あとは、「空間の力」、「維持・管理」がこの建物で評価のポイントでしょうか。

●”文脈”に対しての評価

“文脈”の変貌を考慮してもこの建築は非常に魅力的だと個人的に思います。

この香港の、紅磡の、理工大学の”文脈”って何?という話もありますが

・香港理工大学の敷地内とはいえ、中心部では無いこと

・大学施設における用途、研究・教育内容がクリエイティブな活動であること

・香港という都市が、斬新なデザインを受け入れやすい”文脈”が既にあり、紅磡という比較的スケールの大きい、建築・構築物が多いエリアであること

これらを踏まえ、建設に肯定的な意見で、高く評価したいと思います。

 

●空間の力

この建築、非常に魅力的です。

日本の建築と比べると雑なディテールはありますが、魅力的です。写真だけでは伝わらない魅力があります。

この魅力がもたらす影響もありますが、適度な内部のオープンスペースの作り方、使われ方を見て、非常に満足しました。

 

●維持・管理

トイレの維持・管理が難しいと感じました。建物内の明るさと対比して、暗い作りになっています。金属感のある暗いトイレ・・・清掃が行き届いていないとあまり良い印象を受けない空間です。

※香港の建物は全体的にバックは良くない印象を受けることが多かったです。日本みたいにトイレがわかりやすく共用部から簡単にアクセス!みたいなことをさせない作りが基本です。そのため、しょうがないのかもしれませんが。

防汚に対しても評価は低いです。きっと空気の質が日本と違って汚れやすいのでしょう。外観でいくつか目立つポイントがありました。

ガラスが結構汚れています。

左の壁の石膏が割れているのも残念です。

庇の上を歩いてガラス清掃にいけるところもありますが、この縦長のカーテンウォールは非常に清掃しにくいと思います。

 

 

 

以上、総評でした。

防汚は気になりますが、実際満足感は高いです!本当にワクワクしました。

訪れた時点で竣工から5年ですが、更に数年経ってどうなっているか。機会があったらまた来てみたいです。次は平日に!

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