SANAAの妹島和世の設計 『S-HOUSE』

S-HOUSE 中国地方/Chugoku

S-HOUSEへの行き方

岡山駅に到着して最初に向かう建築はSANAAの妹島和世設計のS-HOUSEです。

駅から近くまでバスが出ているのでバスで向かいます。

バス乗り場から41番の『岡南飛行場線』に乗ります。

バスに乗ること28分。降りるバス停は慈圭病院です。

そこから鳥のいる川沿いを歩くこと9分。

住宅街の中に見えてきました、S-HOUSEです。

S-HOUSEに到着

住宅街の中なので結構目立ちます。

1996年竣工ですが、結構綺麗な状態です。

実は今はS-HOUSE Museumとして美術館になっています。

竣工してこれだけ年月も経っていますので、前の住人は子供も独立したので引越し、という経緯もあるようです。

 

美術館といっても入館料は投げ銭制となっていました。

美味しいコーヒーもいただき、色々とお話も聞くことができましたので、この建築が残っていくことを願って、心ばかし寄付させていただきました。

このMuseumのサイトによると

『建物は1996年、現SANNA(妹島和世+西沢立衛)が初の木造個人住宅として設計したものです。美術館への転用に当たっては、SANAAから独立した建築家、周防貴之が芸術家と建物をつなぐ美術館コーディネイトと改修を行ないました。』

とあります。

改修が行われているようですが、どこが改修されているのかあまり分からなかったので、私の視点で建築を見ていこうと思います。

アート作品については、かなり斬新なものばかりで、とても印象的でした。

美術館のコンセプトの背景として「現代日本の芸術の最先端を体験できる美術館でありたいとの願いから生まれた美術館」でもあるので、記事の写真の中に作品もいくつか出てきてしまいますが、あまり載せないようにしていますので実際に訪れて見ていただくのをおすすめします。

さて、実際に訪れた際の時系列に見て行きたいと思います。

S-HOUSEの外部

まずは周囲の様子、建築の前の通りはこのような住宅街です。開口部は少なめに見えます。こちらから見える2面の外壁は波型のスレートを使用しています。

 

他の2面の外壁は半透明のポリカーボネート製です。

中は見えないが、光を透過するようになっています。開口部も半透明のガラスです。スレート側はしっかり塗装がされているので留めているビスの錆びは目立ちませんが、このポリカーボネート側はビスが錆びていました。上から何か塗るにしろ、対策は難しそうな印象。おそらくビス部も白にしたかったので、ステンレス(SUS)だと色がのりにくいことも考慮して電気亜鉛メッキか鉄のビスの上に塗装の仕様だったのかもしれません。外部では最低限SUSビスを使いたかったところ・・・元々はローコスト住宅なのでビス以外の納まり検討も難しそうですね。

室外機置場・・・と思いきやここに郵便ポスト。

さて正面入口。アルミ製の引戸です。横に小さなインターホンがあります。

ここに小さくS-HOUSE Museumと書いてあります。

美術館かどうかなんて通り過ぎる人は分からないですね。

そしてここを目的に来た私にとってもなんとも入りにくい雰囲気でした。

中を見ることが出来ないですし、人の気配もわかりません。

ドア越しには何やら謎の音楽?声?が聴こえます。

 

S-HOUSEの中へ

いざ勇気を出してインターホンを押して見学の旨をお伝えして中に入ると、優しそうなオーナーの方が出迎えてくれて一通り説明をいただき、写真撮影OK、自由に回ってください、とのこと。

私にも安堵感が。

そして美術館の概要説明、建物のプランなど資料をいただきました。

入口正面の書斎で説明を受けました。風除室や玄関が無い構成・・・ちょっと新鮮です。平面プランは見ての通り、周囲に回廊のあるプランが特徴です。

1階には書斎、主寝室、子供部屋、和室、2階にはリビングとなっていてここにおじいちゃんとおばあちゃん、若い夫婦にその子供と6人が住んでいました。1階は必ず回廊を通るので少し部屋間は距離を感じますが、2階のリビングからは回廊に面した木建具が開くので全面吹き抜けのようにも使えるのでとても距離が近く感じます。この距離感が特徴の住宅だと思っています。

これを頭に置きながら回っていきます。

 

まずは入口正面にあった書斎。外から聞こえていた音はこの作品でした。

これは現地で体験して欲しいです。15分ほど見入っていました。

すぐ脇には石膏ボードで作った作品。

振り返ると入口の引戸です。

思ったより軽い作りです。

そういえば土足と上靴の境はどのようにしていたんでしょう。ちょっと謎が残っています。

回廊部分です。スレート外壁側は見ての通り、内側は木仕上げです。ポリカーボネート側は非常に明るいです。1人が通るには十分な幅ですが、大きい冷蔵庫を運ぶのは厳しそうな感じです。

なかなか面白い空間です。

1階から上を見上げます。

2階部分は木の建具が回転してリビングに差し込む光の量を調整できるようになっています。

1階のトイレにもアート作品が置かれています。後ろ側は浴槽があります。

L型のプランでこれもかなり変わった浴室。奥を右側に行ったところに先ほどの便器があります。

浴槽を背にして回廊側を見ます。そのままだと浴室内は結構照度が低いです。そのため、こうやって建具を開ききって光を取り入れて使った方が開放的で良いなと思っていました。

この浴室入口の建具を見ます。内側から開けるときは小さな銀のツマミを掴んで開けます。結構小さいので掴み難さは抜群ですが、このサイズじゃないと納まりは難しいなと思いました。

1階から2階を見上げる。かなり近い距離感です。

室内に配管の貫通部が出てきています。割り切ったデザインですね。

住宅にこのような天井点検口がつくのも珍しいですよね。

入れ子状になっているのでどうしても配管の渡りが出たのでしょう。

これは入れ子状でデザインする時はどうしても課題になります。

メンテナンスを考慮すると地中から通すというのも考え物です。ルートも遠くなりコストも高くなり、メンテポイントも増えます。だとすると天井側か・・・とも思いますが、そうなると上に配管を立ち上げるためのスペースが必要になり、室内のスペースが狭くなってしまいます。

どのような判断をしたのかわかりませんが、これが最適と判断したのでしょう。

配管の見上げです。露出でも見た目は綺麗な感じです。

1階の和室。ここにおじいちゃんとおばあちゃんが住んでいました。

2階へ上がります。掘り込みで良いので手摺が欲しいところと思いました。

2階はリビングなのですが、非常に明るく開放的でとても心地の良い空間でした。

右側の棚の中にキッチンが隠れています。柱は細いですね。

アート作品もあります。結構不気味さがあるものも。

建具の上部の納まりです。ヒンジを埋め込んでいるような納まりです。建具を閉め切った時にヒンジが見えないようにしています。

2階から下を見た様子。手摺に膜状のものを取り付け落下防止措置。

左の壁はブラックライトを使ったアート作品。右の建具を見ると足元に戸当たりがあるのがわかります。

最後に2階のトイレです。座って正面に見えるのはトイレ用のTVではなくアート作品です。

あらゆる所に惜しみなくアート作品が散りばめられていました。

 

写真は以上になります。

 

さいごに

岡山日帰りの中、こんな遠くまで来て良かったのか。答えはイエス。ここまで来た甲斐がありました。非常に満足しました。

住宅建築は外から見ることが出来ても入ることが叶わないものばかりの中、貴重な体験が出来ました。

こういった建築が後世に残って行き、こうして訪れることが出来るのは非常に良いことだと思います。

使い勝手は良くないところはあると思いますが、2階のリビングは本当に魅力的で、光溢れる空間での家族団欒が思い浮かびます。

百聞は一見にしかず。是非行ってみてください。住宅に対する新しい視点をくれる建築です。

もしお時間のある方は是非、夜の表情も見てみてください。私が感じた以上に何か違う視点をもたらしてくれると思います。

 

そしてこの建築は今は美術館です。オーナーさんの意向もあり、綺麗に使われています。

訪れた際に写真撮影とwebへの掲載許可をいただいたので記事にしていますが、この記事で少しでも訪れる人が増え、そしてここならではのアート作品に触れていただければ幸いです。

アート作品は年々増えていくようですので、記事内の写真(2017年11月現在)とは異なる状況になっていることも考えられます。年々変わっていく様子を見届けるのも1つの楽しみになる美術館です。

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